ほしねこ/山田せばすちゃん
たちは
五匹づつまとめて軒先に下げられる
目を閉じて耳を折りたたんで
吹きさらしの中寒風に耐えるのだ
時々微かな声でにゃあ、と鳴くのだけれど
その声は風にまぎれて
私たちの耳にはなかなか届かない
「あまりでかい声で鳴くやつはいいほしねこにはならないんでがんす」
猫は昔ながらの日本猫に限る
それも虎や三毛よりも雉猫がいちばんいいのだ
「オスメスはあんまり関係ないみたいでがんすね」
何よりも毛の長いチンチラやペルシャは
乾きが遅いので使わないのだという
猫たちはこの寒風の中で約一月ほど干されてから
家の中に取り込まれて座敷の囲炉裏の上で
また一月ほどいぶされてやっと
どうにか一人前のほしねこになるのだという
「これが去年のほしねこでがんす、できはあんましよくないけんども」
干される前の半分ほどに縮んだほしねこを
そっと手にとらせてもらった
思ったよりもずしりと重いほしねこは
私の手の温みに目覚めて微かににゃあ、と鳴いた
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