エネルギー/片野晃司
足音を浸していく
湿地に乗り上げた艀が
骨格から腐り
醜く崩れていく
わたしたちの
墳墓の土は流れ去り
灰色の石棺が雨曝しになる
水溜りに向かって
傾いていくわたしたちの住宅
水浸しの小さな靴
その子らは助からない
あるいは
わたしたちは
誰ひとり助からない
薄汚れた窓硝子の内側で
銀色の鱗粉が舞い上がる
いま
生まれたばかりの子供が
いっせいに年老いていく
埋め立てられ
塗り固められた
観測所の
最後の技師が
信号弾を打ち上げる
渾身の力で
詩誌「ガニメデ」2006年12月
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