桜は桃色じゃない/蒼木りん
 
宇都宮へ行くときも
帰るときも
今日は晴れていたから
ボーっと運転していた
ラジオの
ショートストーリーを聴きながら
頭の中で場面を想像して
そんなことさえ
じゃまされずに済むひとり
桜が咲きだしたから
自衛隊のヘリコプターを
不思議な気持ちで見ていた
いったい
気に入った君と
わたしは何をしたいんだろう
手を握り合ったり
触ったりキスしたり
核心を突いたり
何がすきなんだろう
チーズが嫌いなのには
困るけど
嘘かもしれない言葉で喜んだり
悦ばせたり
そんな一瞬に賭けて
その先は虚無かもしれないのに
ひとりのときに
そんなこと考えてる
しょうもない女
昨日まで冬だったのに
性懲りもなく
また澄まして春がやってきて
わたしはまだ冬の身体なのに
春がかゆい
宇都宮は
なぜか桃色の印象

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