春夜風味/サバオ*
 


桃色の甘い海に溺れながら
貴方だけを見ていた



あたしの愛しい人には
守るべきもの というものがあって
運命という 絆が強すぎるみたいで
あたしは遠巻きに
とぼとぼと 途方に暮れて

愛しい人の指先は どんな味がするのだろうと
痴女のように 俯くことしかできないんだって



見つめる瞳の色を 知られたら
聡い貴方に すべて見透かされそうで
距離を置いて そっと伺うしか術がなく

だから
貴方があたしを見る時の 瞳の色を知らない
それは幸せなことかも 知れない



想いが
匂うんじゃないかというくらい 駄々漏れて
足元に滴
[次のページ]
戻る   Point(5)