ひとつ しずむ/木立 悟
 




銀が銀を囲む道
鍵が鍵をひらく道
迷子の文字
目の奥に目を描く銀


誰もすぎず
誰もすぎない
銀の鎧の内の道
やわらかな光の刺さる道


長く長く猫が鳴く
流れぬものが流れゆく
端々 角々
一瞬の緑が夜をわたる


とぼしくまとうものが剥がれ
そのままのからだを季節はゆく
道は飛び去り
道は降り来る


指を切り
岩に触れる
やがて緑に
傷は増える


からだ かたち
夜は揺らぐ
鳴る色はただ
ひらきひらく


降るものは沈むもの
けして何かにならぬもの
底へ底へまたたきながら
泡の柱のからだを運ぶ


光の水
空へ到く羽化の音
夜より暗い夜の半面
道を静かにすすみつづける





















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