今宵はあなたの舞踏会/水島芳野
顔のぼやけた数人を認めないことで
自分の価値をあげようとしてる
仮面ばかりが豪奢になったこの星で
どうして素顔を人に受け入れてもらえるなんて
思うの。
君がつむいだ言葉と嘘を束ねて
すべて焼却炉に捨ててあげる。
君のたわんだ不安と糸を結んで
すべて深海魚に乗せてあげる。
星の底まで落とす。
静めて鎮めて沈めてしまう。
なかったことにならない
過去だけが永遠に消えない
だけど君も僕も消える
目の見えない魚が泡を吹く
何も見えないくせに幸せそうに言う
おまえはふこうだ、って。
何もかも見透かされてる
自分以外の顔はよく見える。
色鮮やかな彩りが全部虚飾なら
君はきっと何も信じられなくなるんだろうね。
けれどどうかつま先は凍らせないで
凍てついたガラスのピアノの音色と
燃えさかる弦楽器のダンスが
君を誘うよ。
なくならないけど
忘れさせてあげることはできるよ、って
だからほら、
お手をどうぞ。
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