バスが通り過ぎた/北野つづみ
 
いま 窓の向こう バスが通り過ぎた
家の近くの停留所
僕の乗ったことのないバス
バスは走っていく
静かな夜の街路に
大きなエンジン音を響かせて
十字路を真っすぐに横切り
マンションの四角い灯りたちを
遠目に見て
がらんと淋しい公園や
黒々としたサトウカエデの並木のある
曲がりくねった坂道を
赤い尾灯だけ残して走っていく

そこから先は僕の知らない風景
バスの外は
墨を流したように真っ黒で
窓ガラスには明るい車内が映っていて
その 冷えたガラスに額を当てたまま
僕は体を揺らしている
黙々と夜の真ん中を走っている

目を凝らせば
前照灯に照らしだされた道端
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