海想癖/山中 烏流
た後
どこか遠い/わたしの知らない場所で
通りすがりのうみねこに
いともあっさりと
啄ばまれたのだという
/きっとそんなものだろう、
彼女はけばけばしかったし。
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かさぶたが甘酸っぱく
くゆらせる。虚ろに、するような
錯覚にも似た
わたしはきっと溺れるだろう、それはつまり最初からえらなどある筈も無く、水掻きですら想像にのみ生きているものへと変えてしまう、透/け/る、母はやはり動かない、妹が抱く願望をわたしは否定する、かさぶたは眠らない、本当は眠りなどしない、その下で薄く張った膜が震えている、千切れる音、さりげなく香る、一週間目の絆創膏、わたしの小指は地を踏めない、呼吸が見つからない。
しかし、ここが海でないことを
わたしは
最初から知っている。
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