星から釣り糸を垂れる少女/ヨルノテガム
 






 三日月型の星に腰掛け
 釣り糸を垂らす少女の
 シルエットは明るい

 リールもないのに糸は地球の深海まで届き
 砂にまぎれた平目の目の前で針を泳がす

 夜は多くのものを運び 
 そしてまた
 多くのものを消し去る

 残り僅かな暗闇の中で取り残されているのは
 竿から糸を垂らす少女の物思いと
 深海に眠ったフリする半開きの目をした平目の
 好奇心の揺れ動きだけであった

 水面は耳を澄ます

 もちろん 平目は針を飲み込む
 星は少し傾く
 少女はひかれて地球へ落ち込む
 宇宙はこういうときいつまでもロマンチックに出来ている
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