命の岸辺から/小川 葉
 
 
 
生きてるふりをするから
たくさん汗をかく
汗をかいたら洗濯するから
それ以外に選択できない私たちは
命の匂いを消し去って
また生きてるふりをする
たくさん汗をかく
海のような匂いがしてる
海のような音が聞こえる
あなたとあなたから
あなたではないものが
生まれている
生きてるふりをするしかない
あなたも潮風にあたれば
風になってしまうので
どちらとも見分けがつかない
命になっている
そんなあなたが好きだ
あなたがあなたになった時
私も私になっている
もしも明日この世界に
言葉があるとしても
もう言葉なんていらない
 
 
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