湯呑みの千秋楽/サトタロ
水曜日の午後に区の体育館で
高さ二メートルはあろう湯呑みが二つ
戦っていた
バトミントンに興じる小学生の横で
体を打ち付けあってお互い一歩も引かなかった
激しい体当たりが繰り返されるが
湯呑みは思いのほか頑丈で
壊れる気配を見せなかった
業を煮やしたヒグマたちは
湯呑みから飛び出てきて
結局生身でどつきあい始めた
これがほんまのどつき愛や
小学生は手を止めて
テレビで覚えたであろう関西弁で囃し立てた
がっぷり組み合って動きの止まった両ヒグマの尻尾を
ラケットでそっと撫で回して笑い転げた
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