映画日記、ただし日付はてきとう3/渡邉建志
けること。映画館とは、たぶん、境界のあいまいな人たちの教会のこと。
境界があいまいな女の子がいた。いい香りだけ覚えている。彼女をおおっていた空気の凛とした感じと。南禅寺。疎水。青い空。暑さ。17。白い服。やわらかさ。あいまいな夢のように、彼女は僕の脳のある部分を占めていて、その夢はずっと醒めないでいる。
映画日記、ただし日付はてきとう、と題打ってきたけど、もちろん日付は正確であって、あの頃は映画の日々だった。「映画の日々」というのは、確かにある。そして去って行く。僕の映画の日々が去ったころに、最果タヒさんから同人誌「アンプル」への誘いが来た。僕は書き溜めていた映画日記をまとめて出すことにした。
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