新しいたわし/小川 葉
 
 
 
ふとわたしはある予感がして
お風呂場へ走ってゆく
扉を開ければ片隅にいる
たわしは新しいたわしに
買いかえられていた

お風呂掃除係のわたしに
ぼろぼろになるまで付き合ってくれた
たわしは大切な友だちだった

毛の生え際も
その癖も
喜怒哀楽の表情も
声、さえも
今はもうない

わたしは
新しいたわしに
照れくさそうに挨拶して
いつもより静かな
お風呂掃除を始める

どうして僕はここにいるの?

そう言ったのは
わたしなのか
たわしなのか
どちらとも区別がつかない
 
 
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