断頭/片野晃司
わたしたちが見送ったもの
草叢に埋没した無線室で
わたしたちが聞き取ろうとした
欠損した最後の信号
そして忘却
わたしたちは死につつある
そのわたしたちのすぐ隣で
呼びかけに応えることができる
いま死につつあるあなた
あるいはわたしの
首がまた分割されている
その一瞬をさらに分割し記録する
切断された頭部の
わたしたちはまだ生きている
わたしはもう一度
瞬きをすることができる
遠雷
枯葦がいっせいに靡き
潮が満ちてくる
そして忘却
幾度も繰り返された死を
わたしたちは覚えることができない
わたしたちのすぐ隣で
また切断されるあなた
その次にわたし
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