星型の住宅/片野晃司
 
いきます
皿の上で虫が死んでいます
洗濯機、トースター、
星型の住宅の
いくつもの調度が落下しています
退色したダイニングキッチンが
雲の向こうへ落ちていきます
テレビが、ラジオが、
ひとつひとつ沈黙していきます
ダストシュートは腐敗しています
飲み水はあわ立っています
かつてあったもの
手に入れたもの
戻らないもの
抜け落ちていくもの
忘れられながら
わたしたちは
急速に老化しています
ダイ、ダイラ、
赤茶けた小さな畳
剥がれ落ちたタイル
壁に貼った写真
わたしたちは
まだ観測できています
ダイ、ダイラ、
まもなくテープが尽きようとしています
星型の住宅が
燃えながら
砕け散りながら
空を横切っていきます




詩誌「ガニメデ」2007年4月

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