アンチマテリアル・ブロードキャスター/ゼロスケ
 

ああ……
ケーキなんて嘘さ
優しげな瞳をしたあの人は
甘い期待に励まされた
子供たちを裏切った
食卓のうえを見る
歪んだ顔が曲がって映る
ケーキなんて嘘さ
白い皿には何ものっていない

渇いた視線をさえぎる背中は青く光り
美しく切り抜かれた言葉の陰で
巧みに隠されてきたマテリアル
声に出さなくたって分かっていた
人間の蔑みは本当のこと
錆びた視線が刺さる痛みも
本当のことだったのに
知らないふりをして

今まで綺麗な未来を
信じ込まされてきた
いつだって形而上の希望は
誰かのついた嘘さ
これから暗い林の
襤褸切れのように
歩いていこう


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