春をうたう 愛をうたう/あ。
 
きみに逢えた日に
桜が咲きました


花壇にはたくさんの花
わたしは名前を知らないけれど
きみと同じくらいかわいかったことを忘れません


かわいい花と空と季節ときみを
気付かぬうちに目で追っていたのです


唇に恋文が届きました
それはとても
あたたかくて優しくて
思わず笑ってしまいました
笑いながらきみを見ると
同じくらいに顔をくしゃくしゃにしていて
それで何だかつられてしまって
お互い目を合わせて笑いました


昼と夜の間
淡い色の時間を愛しています
わたしたちにくっきりした色は似合わない
あくまでもぼやけた輪郭でいたいのです


この春最初の桜は
きみと一緒でした
花びらにくちづけして
その頬に指先で触れました


わたしたちは
あまりにも儚い花でした



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