絵本/
たもつ
目の見えない猫に
少年が絵本を
読み聞かせている
まだ字はわからないけれど
絵から想像した言葉で
ただたどしく
読み聞かせている
猫は黙って
耳を傾けている
少年の言葉は
よくわからないけれど
皮膚病で毛の抜けた手を
時々舐めながら
伝わってくるものに
黙って耳を傾けている
ああ、
あれは風の音だよ
僕にも見えない
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