絵本/たもつ
 
 

目の見えない猫に
少年が絵本を
読み聞かせている

まだ字はわからないけれど
絵から想像した言葉で
ただたどしく
読み聞かせている
 
猫は黙って
耳を傾けている
少年の言葉は
よくわからないけれど

皮膚病で毛の抜けた手を
時々舐めながら
伝わってくるものに
黙って耳を傾けている

ああ、
あれは風の音だよ
僕にも見えない
 
 
戻る   Point(30)