移動/カンチェルスキス
 





 何気なく押しだした吐息に
 繊毛が混じる
 機械じみた寒さが
 曇りガラスの窓を割る



 結び目が一つだけついた
 硬いロープが
 乾いた土に
 弓矢を放った軌跡のような
 薄い雲がひとすじ
 奥行きを増す空に
 伸びている



 昨日と今日と
 考えられるだけのことは
 考えた
 赤ワインを飲んで
 窓のそばに瓶を置いた
 どんなに離れていても
 救急車の音が
 聞こえてくる



 透明なガラステーブルに置いた
 コルクには
 もう手が届かない



 アスファルトから伸びた
 雑草の枯れ葉を
 手のひらでつぶすような感触
 みんなから
 消える
 


 
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