夕暮れへの出奔/吉岡ペペロ
 
二十六だった

そういえば

こんな季節、三月も終わりの頃

夕暮れの商店街を歩いていた

腹立たしいことがあって

その日は早くに職場を離れた

そんな時間帯の

光にいるのは久しぶりだった

匂いや風や人影をなつかしく歩いた


いま四十だ

腹立たしいことがあっても

もう夕暮れに出奔することはない

見つめているだけだ

ガムを噛むように

あきらめを不屈で見つめているだけだ


二十六だった

そういえば

こんな季節、三月も終わりの頃

夕暮れの商店街を歩いていた

腹立たしいことがあって

その日は早くに職場を離れた

そんな時間帯の

光にいるのは久しぶりだった

匂いや風や人影をなつかしく歩いた
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