飛鳥の旅/生田 稔
 
飛鳥の旅

雨にぬれ水のたまれる野に立ちて朝は涼しく小鳥鳴きつつ

山にいれば鶯の声耳にちかく共の女子さかんに声あぐ

棒状につらなりて咲く桃の花天武持統の陵の辺りの

連山の重なるところ人住みて足下に咲ける花桃の木々

木津川の川沿いを行く三人は山の向こうの奈良の国へと

富雄川水を湛える水面に目を移しては過ぎてゆく昼

風は吹き曇る空には陽はなくも我らが道は青草のごと

鴨遊び鵜の泳ぐ池つたいゆく弥生の崇神天皇陵

腹くちく何もなし弥生また一日はすぐ瞬く間に

すみれ咲く景行皇の陵に鳥なきわたりまろき風吹く
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