産声/たちばなまこと
は命を呼ぶ儀式で
私たちもこうやってくるおしく祈りながら多細胞になったと
ふたり
隙間なくあたたかいかたまりになれるのならすてきなことで
あなたたちのそれを教えて欲しいと思う
誰かに明かさないのは
密室や夜に隠れるのは
「どうして…?」
赤んぼうのにおい
できたての細胞のいいにおい
ふたりが混ざったときの
しめったはだかのにおいは似ていて
水に一滴色をたらした
けもののにおい
赤んぼうの父と母だけが知るにおい
つながるっていいね
いままでこんなしあわせ
しらなかったよ
しらなかったよ
衝動にもゆえんがあるはずなんだ
その 手首を押さえつけるちからにも
私は愛する人の肌にくちびるを押しあて表皮をひらき
本能を盗む
私のなかのあなたたちが
いつまでも産声をあげつづける
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