月と部屋/AKiHiCo
夜中の2時半頃目が覚めまして
閑散とした部屋の床に
月が煌々と
其の明りを灯しておりました
わたくしは喉の渇きを癒すべく
水道の蛇口を捻り洋碗に水を注ぎます
泡を含みながら溢れ出す水を眺め
指に伝う冷たさに酔いそうです
静寂で満たされた部屋には
わたくしだけが独り居りまして
部屋の隅々まで月が侵してゆき
飲み込まれそうに為りそうな
そんな幻覚を見るのです
掌から滑り落ちた洋碗が
床で砕けて月を刺し
痛む足許から伝う雫は錆の味
一体何処で間違えたのでしょうか
かくして対で在った洋碗も
青い月は床に環を描き
くるりくるりと廻り出すのです
縺れた糸が絡んでは切れ
切れてはまた連なり
摑もうにも摑めない影に
夜中の4時過ぎまで
独り戯れておりました
割れた洋碗
切れた契
走る刹那の虚無
また宵の時分に幻想を
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