『レクイエム・レモン/ひかり』short version/川村 透
 
太陽は権力の匂いがする
すべすべした君の肌から黒いレモンが香る。

ひかり、降る
ひかり、降る
兄貴は行ってしまう真夏の海、連絡船

君は喪服で
あに、と僕と一緒に座っていた。
あの堤防のさきっちょで
黒いレモンのペンダントをして笑う

君は喪服でフランス人形みたいに愛くるしくて
黒いレモンのペンダントをしていた
僕はちっぽけな貝殻で、海の藻屑で
君は喪服で
黒いレモンのペンダントをしていたんだ。
ふれあいたい。フレア、痛い。いたい、君といたい。手を、つなぎたい。

君は堤防におおぶりのレモンをひとつ、置く。
煮える真夏の堤防にレモンは匂うように溶けて

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