残骸の波/桐野修一
 
血反吐を吐いてぶっ倒れる透明なHomo sapiensを見た家族連れの今日のランチは
豚トロと白ネギのぺペロンチーノでその残飯は浮浪者のディナー。

寂れた海沿いの街の産婦人科医院に勤める女の一日は
一人の胎児を誕生させることに始まり
昼食後に一人の胎児を殺して
それからフラメンコ教室で陽気に踊る。

人に媚びないことを信条とする男は街で出会う無法者の目をけして見ることはない。

長崎産のカステラを大事に抱えて帰郷した老婆を駅で突き飛ばした若者は
ロータリーで若い女を物色している最中にトラックに激突され脳みそを吹き飛ばした。

その返り血を浴びた帰る当てのない少女は血を拭
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