春の影/
小川 葉
春の影が歩いている
人のふりをして
わたしのふりをして
わたしが振り返ると
影も振り返る
いったいどんな過去を
振り返りたかったと言うのか
影は
わたし以外に知らないことを
影は知っているのか
影だけが知っていることを
わたしも知っているのか
薄雲が太陽を隠すと
影は消えてしまった
曖昧な春の
わたしの輪郭が
景色のように
そこに残されたまま
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