春の影/小川 葉
 
 
 
春の影が歩いている
人のふりをして
わたしのふりをして

わたしが振り返ると
影も振り返る
いったいどんな過去を
振り返りたかったと言うのか
影は

わたし以外に知らないことを
影は知っているのか

影だけが知っていることを
わたしも知っているのか

薄雲が太陽を隠すと
影は消えてしまった

曖昧な春の
わたしの輪郭が
景色のように
そこに残されたまま
 
 
戻る   Point(4)