盲目の象/あ。
大きな声を上げて喜ぶ子どもと肩車する父親
隣でカメラを構える母親
恐らくまだ若いのであろうカップル
日曜日の動物園は賑わう
君の口からは
たくさんの刃物のような言葉が発せられ
こんなのどかな風景に
わたしは一人負傷していた
それでもわずかの希望を信じて
そっと横目で顔を見てみる
君の肌はかさかさと乾いており
正面を見据えた瞳には何も写っていなかった
それはまるでさっき見た
盲目の象のようだった
もう帰ってくることはないのだと
その瞳にわたしが写ることはないのだと
傷だらけのわたしにもよくわかった
戻る 編 削 Point(5)