アルス・コンビナトリア:結合術 (部分)/がらんどう
 
ムにおいて、後にピョートル大帝に売却されることとなるアルベルト・セバの「驚異の部屋」を目にし、このような言葉を残している。
「全ての境界は揺さぶられている」


「髭を剃れよ」とピョートルはまさに自分の口髭に剃刀を当てながら言った。肖像画を見る限りピョートルには髭が生えていたので、多分この描写は正しい。口の周りに泡立ったままの泡を泡立たせたまま、泡をまとわせたジレットのT字剃刀を洗面台に溜められた四十度の湯に浸して二三回軽く振るわせた。
「髭を剃らねぇと首を刎ねるぞ」と鏡向こうの自分に向かって凄んだピョートルは、どこが面白かったのか自分でもわからないにも関わらず軽く噴出してしまい、口元に
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