アルス・コンビナトリア:結合術 (部分)/がらんどう
リイチ・チャイコフスキー・・・こいつもピョートルか、まあいい、とりあえず今のところは。
私の目には見えない楽団に合わせ、女の死体も口を大きく開けて自らのパートを歌い始める。戸板が流れに揺れて水が彼女の口中に飛び込んでも彼女は既に死んでいるので気にすることなくソプラノで歌い続ける。マリア、彼女の名前はマリア、私はそれを知っている。マリア、なんて工夫のない名前なんだ、キリスト教徒の女は三分の一くらいその名前のような気がする、カトリックだろうが正教だろうが関係なく。彼女の白い襦袢ははだけ、彼女の胸元から腹部にかけてはほとんど露となっているが、私はそれに欲情することはない。彼女は死んでいる、彼女は死んで
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