アルス・コンビナトリア:結合術 (部分)/がらんどう
 
向こう岸だ、匂いはここまで届きはしない。つまり、私はそれを描写する必要がない。

ともかく、そのドニエプル川を何かが流れてくる。何か、だと? 私は、私だけは、いや、私だけがそれを知っているというのに、何か、だと? それは川のどの辺りを流れているのだ、私は大河の部類と言ったではないか、川岸に近い辺りと中央部では全く違うはずだ。川岸近くということにしておけ、それが無難だ。川岸に近いところを、岸に打ち上げられぬように、人の歩くようなゆっくりとした速さで、一畳ほどの大きさの戸板が流れている。その木板の上には仰向けになった女が荒縄でしっかりと括り付けられている。女は多分死んでいる。くそ、多分、だと。それ
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