アルス・コンビナトリア:結合術 (部分)/がらんどう
 
ニゥ村、そう、それがその村の名前であったはず。川のほとりの農村。農夫が実った穀物を鎌で刈っている。片手で根元を握り、もう一方の手で草刈鎌を扱う。穀物はどうやらコメ科の植物、おそらくはコメだ。金色に実っている。つまり、季節は秋なのであろう。知らない、私は知らない。この話の季節を知らない。私は正しいことを言えない。だが、描写しなければ・・・見えないもの、見えていないものであっても、描写しなければならない、語るためには。描写しなければ。農夫が節くれだった右手に持つ草刈鎌の刃に広がる錆の文様から、その筋ばった細い腕を覆う赤く日焼けした肌から、年齢と等しいほどの長さの労働によって前方によじ曲げられてしまった
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