盲目の象/木屋 亞万
まれ変わる
耳を澄ませば、象の心臓が
海の始まりの音を立てる
羊の毛のように温かい水の中で
僕は「光」を忘れ物箱に入れる
(闇の中でそれは必要ない)
透明の象は移動している
すべてが眠る絶対零度の闇の中
原子も眠って動かない
夢の外には夢がない、と
ばあちゃんは笑った
ばあちゃんはもう象には会えないらしい
(大人が信じないのも仕方ない)
象はいつも裏庭で休んでいるから
会いたくなったら透明になって
裏庭の方に歩いていけばいい
とばあちゃんは教えてくれた
(本当にありがとう)
6時に沈む太陽を見ながら
象の心臓の口真似をしていたら
目から小さな象が溢れてきて
僕は誰もいない家を飛び出した
(ばあちゃんの病院へ行こう)
(今日、
目から象が出たんだ、
ばあちゃん、
ばあちゃん、
早く帰ってきてよ)
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