硬直したネクタイと額の皺を結ぶやさしさ/蘆琴
 
足元の空が、溢れるビールのやうに廻転してゐる
新しい笑顔を求めて、またさり気ない人生の表面を踏んで歩くのか
複写された私自身は永久にほころびぬ
無碍な命を久遠の先々まで保つてゐる、私といふ私

ああ、優しさ
放埓な精神のビートが刻むのは涙の痕
いつまでも消えぬ名が、暗闇に浮かぶ焚き火の焔のやうに

この休符は何を破砕しやうといふのだらう
彷徨の果て、一体誰の胸へ収斂していくのか

このままコンクリートを舐めてゐても
面影は戻つてこない
いま、日が沈んだばかりだから
戻る   Point(1)