自分を見つけてしまう色分けされた世界 書評『流砂による終身刑』/イダヅカマコト
 
川上未映子さんが受賞した今年の中原中也賞の候補だった
小川三郎さんの詩集、『流砂による終身刑』の詩を読むと、自分の理解している世界の見え方に、りんごの切り口のような割れ目が見つかります。

短い詩の中で、色鮮やかな言葉がたくさんある分、その飾られている言葉の中に語り手がいるという状態がとても不思議になるのです

例えば『羽影音』という詩は、脳のうごき、特に見えないところで確かに動いている様子をうまく捉えているような気がします。

{引用=羽影音

午後
部屋の暗がりに
ビーズが降っている
いつの 午後だか
晴れて儚い季節の午後に
子供の色で
降り積もる
暗がりの方へ
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