空ににげる/コーリャ
浜辺から逃げたあの日に、あわてておとしたサンダルが一隻、いま、海にこぎだす、チベットに高跳びするのだと、空と海が双子みたいにみえたので、飛行できる気がしていた午後。
公園のゾウの遊戯具のした、かくれんぼする相手は夕暮れ、7時なればきまって逃げ切ったが、口笛ばかりがうまくなっていった、文集で将来なりたいものは「口笛のソリスト、あるいはとっても素早い四足獣、または魚」だと言ったことがある、そのころは鳥を憎んでいた。
チベットにいったことがある、船と電車にのっていった、もちろん船と電車は空を飛ばなかった、チベットの雲は羊みたいにひとなつっこくて、うんと背の高いひとは雲にうまってしまってい
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