潮騒のひと/恋月 ぴの
 
ってみた小さな漁港ではゴム長を履いたおんな達の姿
水揚げされたばかりの魚を台車に乗せ運んだり
干物用にと忙しく腸を取り除いていた

秋の日は釣瓶落としと人は言い

逆子だと診断され慌てふためいたのも大切な思い出となるのだろうか
お腹を蹴る力強さを増してきた我が子がいとおしくて

あのひとのこと
美佐子さんは今でも愛しているのだと思う
腹違いであったとしても愛するひとの子を引き取って育てようとする思い
今の私には判りすぎて胸が痛くなる

ふたりの女に愛されたあのひとって幸せだったのかな

ネットの片隅に見つけた小さな記事
私が死にそこなったキャンプ場近くの雑木林で見
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