『群青』/東雲 李葉
夜明けの街
ビルの硝子は空を映して
深く青く
深海のように深淵のように
瞬きの度に光の差す時間を
吸い込んで見上げれば
頭上には群青
鳥が泳ぐ青い海
私なんて実はいない
誰かが成り済ましているのだ
ちょうどあのビルの硝子のように
私もまた誰かを映して放つだけ
なんとも粗末な営みだ
私しかいないと思わせて
実は私なんていない
空は映る鏡すべてにあって
実は空なんてない
海は空に焦がれ空を映し
空は海を哀れみ海を映す
初めから誰もどこにもいない
光だけが私を知っている
夜明けの街で自分が何者で
どうして生まれたのか分かりかけたみたいに
朝は眩しく街を覆い
昨日の疑心を忘れたまま私たちは今日を生きる
終わりの時 その視界を覆うのは
光とともに夜明け前の青い色
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