知らない大人/小川 葉
 
 
始発のバスに乗ると
一人でどうしたの
と尋ねるので
怪我をして病院に通ってることを
運転手さんに話した

発車時間が近づくと
大人がたくさん
バスに乗り込んできた

知らない大人と
会話したのは
その時が
はじめてのことだった

バスを降りる時
運転手さんが
ありがとうと言って
微笑んでいた

知らない大人と会話したのが
はじめてだったから
家にも近所にも
知ってる大人ばかりであることに
はじめて気づいた

運転手さんの家にも
知ってる子供がいるのかな

自分の子供なのに
まだ知らないみたいに
生まれたばかりの赤ちゃんを
見てい
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