二千九年、LOVE/捨て彦
 
bleを拭く、を幾度も繰り返している。ナンシイは濡れた肴や倒れたビイル瓶を忙しなくゴミ袋に詰めていた。小山も散乱したTableの上を整頓している。伊藤は一人其れを見るとも無く見て過ごした。どうやら今日は何時もより飲みすぎてしまッたのかもしれない、今日は少し浮かれ過ぎた、ガラにも無く、初対面の女性を前にして動揺している。もう少し自制しなければ不可無いな、と酔ッた頭の中で様々な思考が行ッたり来たりを繰り返す。そして、其れ故に又現実の行動が御座なりになる。
伊藤は髪をおもむろに掻いて、首を振って正気を保とうと眼を見開いた。と其の時、整頓をしていた目の前の小山の唇が伊藤に向かッて小さく動いた。
「 LOVE 」
小山の顔は深酒の所為か驚く程赤く昂揚して、眼は涙粒が毀れそうな色をしていた。そして其の瞳で伊藤を凝ッと見ている。伊藤の胸が物凄い音を立ててドックンと一つ鳴ッた。


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