桃色孵卵/北街かな
おきざりの波打際で膝を強く強く抱くと
両の乳房が ぱんと張って
ふとももに弾かれて 憂鬱に揺れた
一方的な愛情ほど与えすぎても尽きないよ
あたためて触れてひどく突きつけて
かき鳴らす歌を変えても
あたたまらないんだよ?
ピンクのパールが頬を辿って
浜辺にポトと くぼんで はまる
拾い集めても足しにもならない
あわあわに さらわれてゆくわ
貧弱な母性は少年の鬱屈を受精して
報われぬ恋愛顛末を堕胎してしまったけど
月末には変わらず血は流れている
安心しなきゃいけない
忘れなくてはならないの
海の家は氷点下に潰されかかり
堅く、かたむいて、かじかんでいる
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