死におびえるヴィジョン/たちばなまこと
吹かれていた
だけど彼はあの子を抱いて
たかいたかいをして
ご飯を食べさせて
花の名まえを教えて
死んでいった
私のヴィジョンなんて
死んでしまえばいいのにと
いつもいつも思う
私は私の思う詩人だからだ
余けいなことと伏線ばかりをヴィジョンにして
人知れず内臓を混ぜくりかえしている
私は死におびえながら
生きること 生むこと 新しいこと 進むことを願っている
そんな夕方は明日からの仕事を抱えて
あの子の
待つ駅へ!待つ駅へ!とこころがふくらんでゆく
ホームの階段近くに停まる車両
ドアの前で拳を握る
子どもたちの園(その)があるビルの
階段を駆け上りインターホンを押す
笑みをこぼしながら胸にダイブするすがたを
ぎゅぎゅーっと
抱きしめる
私のヴィジョンよ
死んでしまえ 死んでしまえ 死んでしまえと
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