瑞々しい嘘/木屋 亞万
張り詰めたラップを着て
新しいキャベツが店頭に
テカテカと並んでいる
両手に乗せて天秤になるひと時に
良いキャベツは感覚で選ばれる
冷蔵庫で
一枚ずつ身包みを剥がされるのを待つ間に
芯は見えないところで腐っていく
茶に変色し悪臭の液を垂らす
野菜室、キャベツの横で
「花は咲いた途端に嘘になるんだ」と大根は言う
立派な葉付き大根だった彼は毛髪を刈り取られ、
足を切断されている
「戦争に行く奴はみんな丸坊主さ」人参は笑う
三本並んで立っていた人参も、残すところ彼ひとり
どことなく痩せてきたような気がする
彼の芯から青い髭が生えてきている
春なのに冷
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