色鉛筆のためのパレット/風は薄衣の緑のほうへ/海里
 
マリエのヴェールは白
と決まっていますが
佐保姫のそれは緑

風の掌は
花婿でもないくせに
花嫁の薄絹をそよがせてゆきます

ちからを
身のうちに巡らせ続けた季節を終えて
撓めていたものを
ありったけ解き放つとき

木の芽やつぼみたちが
こまやかな発条が
あらゆる種類
素粒子となって震えています
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