嘘の砂漠/智鶴
 
美しいものは全て偽りだ、と
指先の感覚が暗示をかける
諦めたように
優しい痛みなどは
もう、飽きた
望んだだけの悲哀も
苦しさに似せた甘美な夢も
すべて受け入れて
私は大人になった

ただ、何も知らないまま

貴女は私の残骸を抱いて
知らない私の名前を呼ぶ
泣いてくれるのなら
それはきっと幸せだろうけど
いずれ貴女も忘れていく
私など居なかったかのように

風化していく
残骸

貴女が投げ捨てたような感情で
私は今も潤っていく
骨が乾く砂漠も
貴女がいなくなっても
幽霊のような顔をして

今は飛べずに此処に佇むことも
悪くはないと思っている
いつか何処かに置いてきた
私の残骸を抱えて
踏み出せる
到底飛べそうもない空に
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