空爆/楽恵
 

元どおりだった 空も庭も蟷螂も電柱もプールも母も 元どおりだった

ただその日から 

私はものの名前を覚え始めた

この世界には 名前という便利な存在があることに 気がついたのだ

けれども私の言葉は 本来私が覚えるべきだった言葉は 

あの朝 空とともに爆発して 見えない塵となって 今も世界を漂っている 

だから私は 私の言葉をもたない 今も言葉を知らない 何も知らない



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