肥満譜/狸亭
時代遅れの政治家並に肥満して
申し分ない冷暖房付の部屋に
横たわり 詩をつくるその男の 別して
濁った目と憂鬱な顔こそ 思うに
現代詩そのもののありようとは言える。
ありふれた喫茶店の 薄暗がりでは
文科学生たちの議論が湧きかえる。
「イリュミナシオンは錯乱の天の河」
「いやあれは醒めたる天才の見たものだ」
「わからぬ奴は唯単にボンクラなのさ」
肥満した男の耳に聴こえるコーダ。
苦い記憶がフーガのように鳴り交差。
虚無で膨れた風船のような詩人
偽善者に似た男には 生気が無い
肉体が次第に肥え太って 世塵
に塗れてしまっては 引っ込みがつかない。
恋に
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