博士の愛した異常な数式/影山影司
 

 博士が投げ返した本を見ると、以前読みかけて止めた本だった。私には合わない世界観だったが、何故か頭に残る内容だったから久々に引っ張り出してみたのだ。
 長くしまっていたから埃がしみ込んでいて、ページを開くと埃がふわりと飛んだ。
 適当な一文を読むと忘れていた情景が思い浮かぶ。
 ここよりずっと暗い雪国の話。大勢の人間が出てくるのに、誰にも名前がついていなくて、未来の話なのに、なんだか昔を思い出す世界観。
 題名はなんだったか思い出せない。久しぶりに味わうとまた違った感覚に浸れる。
 きっと今なら面白く読めるだろう。
 全部読み通したら題名を見よう。
 傍らの机に本の表を下向きに置いて、今読んでいる本に戻る。 
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