春/青井とり
 


僕の肩の左側をひゅうひゅうと擦る
そいつに名前はない
けれど風は流れる


キャンパスにぶちまけられたような青の中に
風はある

水に溶いたような風の中に
青はある


膨らんだ光と
溢れだした緑と
柔い音の隣を通り抜け

あの小さな花の移り香を纏って

届けに 届けに






はじめまして、さようなら




(僕が風を知らぬように
    風も僕を知らぬのだ)




ぼやけた頭の片隅で
僕はいつかの青を思い出す






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