修羅を読む(5)/Giton
雲の眼路 光る山脈
なびく髪 鹿(しし)の鼓笛に
いにしへ返へる
☆
銀の微塵に 黒鞄のイムバネス
ゆれる菅穂 火山灰のみち
☆
稲の槍
黄水晶(シトリン)の夕べ佇む 古びた黒衣
牛飼ふ師父よ
☆
原体(はらたい)の 胸波だてる わかものら
菩提樹皮(まだかは) 縄の 山の戦士ら
☆
わかやかに
かがやく肌膚(きふ)と筋骨を
椈(ぶな)と腐植の間(ま)に削り
蛇紋地(やせち)憂ふる日と風の
野に年累ね 師父たらん汝れら
(反歌)
原体の銀河のまつり 夜も更けて
太刀と鼓の音に 高原の月
☆
ぐみの木ひかつてゆする
蓼の花
おまへをなんべんも
風のなかで呼ぶ
☆
「林のながさ来たよだ」
松精(テルペン)を
栗鼠のやうに
したふおまへに
☆
風の音
流れる栗鼠 立ち止まり
いぶかしさうに こつちをみる
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