死人(しびと・Emによるテンポ・ルバート)/ホロウ・シカエルボク
なアイス・コーヒーが置いてある、やはり、味など少しもなかった、俺はため息をついて椅子に身体をあずけた…ゴーレムの背中が見え、やがて遠ざかっていく…俺は店の隅にギターが投げ出されてあるのを見つける、ギターを持ち、うろ覚えの、昔作った曲を弾く
『その音楽が有機的でなければ俺はおそらくそこから抜け出すことは出来ないのだ、夢の中の俺のギターの腕前は現実とそんなに大きな違いはない―ロー・コードだけのその曲を何度も弾き損ねる、俺とあまり変わらない大きさのゴーレムの一団がカフェの席のあちこちに座り、俺がそれを完奏するのを待っている、俺は指先を破りながら懸命に弾く―こんな光景をどこかで見たことがあると思いながら―…』
ゴーレムはよく判らない感じで身体を揺らし、ばらばらに立ちあがる、そしてこの忌まわしき世界に朝が訪れ、ゴーレムどもは砂に帰っていく…俺はギターを置いて立ち上がり、空白の客席に礼をする…
ああ、朝が来るのだ、畜生。
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